高橋俊介氏著。
20年以上前の本であるが、古さを感じない良書。
「キャリアショック」とは、自分がそれまで積み上げてきたキャリア、自分の思い描いてきたキャリアの将来像が、予期しない環境や状況の変化により短期間のうちに崩壊してしまうことをいい、高橋氏が提唱した概念とのこと。
新聞記者の事例があった。人脈や情報網の陳腐化。まだまだ現場か、それともサラリーマンとなり、内勤となるか。年齢とともに、発現してしまう。仕方がなく、怖い話ではあるが、うまく付き合っていくほかないと思った。
全6章。
変化の時代
変化の激しい現代
先の見えない時代
等々、色々言われているが。
■序章 キャリアショックはある日突然やってくる
・変化の時代のキャリア構築は予定どおりにはいかない。
・ブランド・ハップスタンス・セオリー「計画された偶然理論」アメリカカウンセリング学会誌等で発表された。
キャリアは、基本的に予期しない偶然の出来事によってその八割が形成される。そのため、個人が自律的キャリア形成していこうと思ったら、偶然を必然化、つまり偶然の出来事を自ら仕掛けていくことが必要。
p33偶然を必然化する行動・思考パターン5つの特徴
1好奇心
2こだわり
3柔軟性
4楽観性
5リスクを取る
■第1章 成功のキャリアか幸せのキャリアか
・資格で人の値段は上がるのか。
・社会的モノサシ。その一つとしての資格取得。資格の価値は、需給関係で決まるとあるが、資格ブームと資格の稀少価値の関係は。
・資格より実績。事例:日本オラクル 資格不問採用。
・具体的目的:ある女性の事例。取得した資格による、男性相手の交渉力ベースアップ。目的が明確だと手段としての勉強や資格取得も短期集中決戦で行う傾向が強い。
・資格取得の最大意味合いは、資格を取る、行動に自分を投じる行為のこと。
・自分の価値を上げるではなく、より好ましい偶然を、起こすためのリスクテイクのきっかけづくりとしての意味合いが重要。
・幸福のキャリアを自分で切り開く、三つの面。
1スキル
今持っているスキルや資格をどう活かすか。まだ足りないスキルや資格をいかに短期間の間につけていくか。自分の基準で選ぶ仕事と自分のスキルレベルとのギャップを埋めていく発想が必要。
2コンピタンシ―
変化の激しい時代にキャリアショックに柔軟に対応しながら、幸福なキャリアをつくっていく。思考特性、行動能力
キャリアコンピタンシー。
3パーソナリティ
アメリカ人材評価コンサルティング会社キャリパー社。心理学を応用した、40以上の指標により、パーソナリティを評価。
・p57「20・25・55の法則」
・動機のアセスメントツール「エニアグラム」
・p71 二軸「キャリア選択」マトリックス ナンバーワンキャリアとオンリーワンキャリアについて。
縦軸 コンピタンシースキルの有無
横軸 動機とのマッチング強弱
・p77 四軸「職種タイプと人材要件」
縦軸 特定専門分野スキルと経営一般スキル
横軸 WHAT含めサイクル全体とHOWやDOなとの特定部分のみ
・人脈、情報網の陳腐化問題。(新聞記者の事例)
■第2章 キャリアを切り開く人の行動パターン
@仕事を膨らませる(事例)
・既存ではない、新しい分野の仕事を自ら作る。
・社内ではなく、自ら、自分の顧客に企画を仕掛ける。(外部から認めてもらう)
⇒やりたい仕事を先に膨らまして、先手先手でやりたい方向に仕事を膨らませてしまう。
・上司や先輩の後追いをしない。新しい分野で、自分の仕事にも関係してきそうな分野に狙いを定めて勉強を重ね、実績を創る。
・ある取材対象者の気づき
「人の仕事をなぞっているだけなら、お前はただのサラリーマンだ」
「お前がこの部署にいたという傷跡を必ず残していけ、そのためには何か他人と違ったことをやれ」
A布石を打つ
・社外、社内人脈をつくる、日ごろから、我々は何をすべきなのか、問題意識をキーパーソンにぶつけ、互いに共感する。
・論文発表
・上司との関係づくり
・目標公言
Bキャリアを進める
・周辺から本丸に進む(本丸は、競争が激しい、そもそも、先人達にはかなわない。)
・ビジネスリーダーを目指すなら本流より傍流(小さな傍流から、全体を学ぶ)
・スキルを一気呵成につける(ダラダラやってても、ダメ)
・人材輩出企業はキャリアアップのテコになる
Cキャリアを振る(現状脱出する場合)
・きっかけは気づきと切迫感⇒キャリアチェンジへ
・キャリアチェンジが隠れたポテンシャルを引き出す(事例:エンジニアから商社へ。自費留学など)
・キャリアチェンジのための海外留学
・計画的なキャリアチャレンジはありえない
p117 二軸 キャリアを自ら切り開く4つの行動パターン(上記の@〜Cをプロットしたマトリックス図)
縦軸 行動の計画性
横軸 キャリアの連続性
日常的には仕事を膨らませること。
何年かに一度、布石を活かして、あるいは次の仕事の具体的イメージを持ってキャリアをステップアップさせること。そして、長いキャリアの中で一二度、必要に迫られてキャリアを一気に振ること。
@を10年に1回やっても
Cを日常的にやっても、それぞれ意味がない
「非計画的な仕事拡張」(思い付き、まぐれ)
「計画的なキャリアチェンジ」(変化の激しい時代に、非現実的。5年先、10年先は見えない、わからない)
それぞれも、意味をなさない。
■第3章 キャリアを切り開く人の発想パターン
幸せなキャリアを切り開く人の価値観とは何か
[第一ポイント] 横並びキャッチアップか、差別性稀少性か
差別性・稀少性:一般的普及前に資格取得とか、本流から外れている、それなら自費留学し本流を目指さず、自らの差別性を高め、あえてキャリアを横に振る。人と自分は関係ない境地に達し、人との違いにこだわる。自分が大切にする価値観。自分ならではのコンピタンシー。
横並びキャッチアップ:人と同じでありたい。人より少しでもよくありたい。まわりとの相対的比較を常に意識する。そのため、絶対的満足感は得られない。
[第二ポイント] 同質経験を活かすのか、異質経験を活かすのか
[第三ポイント] 過去の経験にこだわるのか、今後の動向に賭けるのか
重要なことは、自分で実感し、判断し、こだわりを強く持つこと。
[第四ポイント] 指導してもらえるのか、好きなようにできるのか
キャリア切り開き型人材の特徴として、自由度の幅を選ぶ傾向が非常に強い
[第五ポイント] 社会的自己意識か、私的自己意識か
「EQ(感情知能指数)理論」に出てくる概念
社会的自己意識:自分がまわりからどう見られているか
私的自己意識:自分はこうありたい⇒キャリア切り開き型人材はこっち
[第六ポイント] 合理的判断か、直感か
[第七ポイント] 会社の論理か、職業倫理か