著者は、共著で、望月禎彦(もちづき・よしひこ)先生(人事政策研究所代表)と、橋恭介氏。
200ページ弱の内容だが、内容は濃い。
部下ノートを人事評価制度に。(橋恭介氏(プリモジャパン元副社長))
以下、感想と要約を。
【「部下ノート」のすすめ】
■急に部下は育たない、直ぐに人を変えることも難しい。今いる「できない」と思っている部下を、手間暇かけて育てていくしかない。
⇒部下の気になった行動、言動を最低一行ノートに書くだけ。
■同じ指導を繰り返し行っているケースが非常に多い。同じ言い方をしているから、何回言っても同じ結果になっている。
■上司は意外と自分が部下に対してどんなボールを投げたか、意識して覚えていない。
⇒一度言ったことがうまくいかなかったら、もっと伝わる言い方、教え方はないかと考えた方が効果があり。
■定期的に部下の行動と自分の指導方法をチェックして、どういう伝え方をしたらいいのかを切り口とすると、指導力を常にアップデートすることができる。
■ほんの少しの「言い方」で、部下は意外と大きく成長する。変わってくれるのを待つより、、簡単で楽。
■「できる部下」がいないのは当たり前。優秀な人材に巡り合う確率は本当に低い。
1週間後、「行動変化」チェック。
3週間後、「成果確認」チェック。
■部下がどの工程で間違っているか?
・手順をすぐに忘れてしまう
・操作ミスが多い
・報連相を怠る
⇒個別指導。手間が増えるイメージだが、実際には、部下指導時間が減った。他の仕事に着手できるようになった。
■ノートをネタに、個々に話す時間をつくるようになり、スタッフの性格も把握できるようになった。
■人材定着率アップ。辞める理由が見え隠れしてる。上司が先手を打つことができる。部下との話のネタは、いくらでも見つかる。
【心理的距離を縮める】
■信頼関係構築。会って話したことをまとめるようになると、部下の仕事の状況や心の動きが分かるようになる。
⇒会った時の会話も、表面的な話だけではなくなり深い話ができるようになった。
■上司のイライラが無くなる。メンバーがどういう原因で感情が揺れるか、特徴がわかった。
【書き方】
■PDCA。部下が育つことで上司の負担を減らすツール。
■一人でできる質と量には限界がある。会社から求められている仕事の量と質を保つには、部下育成が欠かせない。
■部下に、仕事の一部を委譲する。自分の仕事がはかどる。
1行動を書く
2指導したことを書く
3行動変容、成果につながったかを、○△×でチェック
4今後の指導を考える
■いつ、どこで、どのようなアドバイスをしたのか記録。
■タイミングも、同じ言葉でも、タイミング次第で効果が変わる。
■「誰に対して」効果確認。
⇒この部下には合わない、この問題を解決する策、向くか向かないかどうかの判断基準を、自分の中に蓄積していくことができる。
■回を重ねることに早くなる。アドバイスも的確になっていく。
1書きすぎない、1行で十分:継続がポイント、シンプルに書かないと、途中で挫折してしまう
2部下全員に対して書かなくてもよい:気になった部下に対してだけ
3毎日書かない
4凝らない、シンプルが一番
5自分が読めればよい
6会議、社内行事イベントだけはNG
■見方が変わる、視野が広がる。
■フィードバックFeedback
・feed⇒食べ物を与える、栄養を与える、
・back⇒返していくこと
上司が返すものは、部下にとって糧になるものという意識が大切。
■感情を持つ人間。同じことを伝えても、タイミングを間違えると全く身にならない。
【行動特性を意識する】
■ソーシャルスタイル理論 ※いずれ、読書感想文を(^^♪
■自己主張度・感情表現度の二軸
■4つのタイプ:アナリティカル、ドライビング、エミアブル、エクスプレッシブ
■ソーシャルスタイルからアプローチ方法
・フィードバック
1賛成反対をすぐに判断しない
2結果原因究明しない
3上司自身の話しない
4話の途中で解決しない
5先入観持たない
6評価しない
・聞き役に徹する
・いったん受け入れる
・話しやすい環境をつくる
1復唱する
2うなずく
3要約する
■フィードバックの際話を掘り下げる、3つの要素
・過去、現在、未来
何がおこっているのか(過去)
なぜ、そうなっているのか(現在)
これからどうするのか(未来)
■思い付きで注意をしない
・メモ書きを用意
・箇条書きで十分
・紙にまとめておく
■人にものを伝える
1結論を先に言う
2伝えたいことをシンプルに
3イメージできるように伝える
■やっていません、を、激減させる伝え方
・行動に移せない言葉は使わない
事例
×「お客様の立場になって考える」
○「実際に自分がその商品を、自宅で使うシーンを想像してみる」
■注意するときはほめ言葉とセットで
1ほめてから叱る
2ほめ続ける
3叱ってからほめる
4𠮟り続ける
3⇒2⇒4⇒1の順で、気持ちが削がれる。
3「𠮟ってからほめる」、を意識する
【やる気をグッと上げる】
■社内口コミ「ウィンザー効果」
・「○○さんがおまえのことを、仕事が早いとほめていた」
・思ってもいないことは話さない、本人と話したときに逆効果
■自分に好印象を持ってもらえると、実際に話すときの心理的な壁が低くなる。
■「部下が失敗した」⇒「こんなアドバイスをした」⇒「部下の行動が変わった」⇒「成果につながった」
・精度が上がれば、意欲アップ、良い循環。
【部下ノートで最初に変わるのは、上司】
■P・F・ドラッガー「成果を上げるには、記録と見直しが大切。」
■人の行動を観察する習慣が身につく
・部下の動きがよく見えるようになると、新たな課題や問題点に気づけるようになる。
■観察力アップ
・視野が広がった
・アイデア
・クリエイティブ力アップ
・ビジネスパーソンとしてスキルアップ
■部下それぞれと、どうやって接していくべきか、わかるようになる。
■部下に、個別に対応することの大切さに気付く。
・宇津木妙子女子ソフトボール元日本代表監督、性格分析ノート「ソフトボール眼(アイ)」
※こちらも、いずれ読書感想文を(^^♪
■行動、仕草、表情、心の動きまでを察することができる。
■判断力、決断力が磨かれ、アドバイス的確になる。
■シーナ・アンエイガ―、コロンビア大学ビジネススクール教授「選択の科学」
※こちらも、いずれ読書感想文を(^^♪
・選択という行為を繰り返すことで、精度が高くなる。以下、二人の事例。
事例1:元チェスプレイヤー「ゲリー・カスパロフ」
経験に基づく直感(informed intuition)
・理性による選択
・直感による選択
⇒両面を併せ持つ「経験に基づく直感」
事例2:ベトナム戦争「ポール・バン・ライパー元海兵隊中将」
コンピュータ演習、アメリカ軍VSアメリカ軍に劣る中東の軍隊
⇒中将が指揮、アメリカ軍に勝利を収めた。
⇒ベトナム戦争当時、戦場での行動を記録することを習慣にしていた。
⇒行動を記録し、見直しながら自分の判断の検証を繰り返していた。
⇒「経験に基づく直感」
■自分の選択を書き留めて、その結果を判断する、その反復が適切な選択をするスキルを磨く。判断力、決断力。
■人間は忘れやすい。
・失敗をして二度と忘れないと思っても、記録をしていないと、頭の中から出て行ってしまう。
【上手にほめる】
■ほめるタイミングも大事。
・効果的にほめる
・部下の成長を促す
・できる部下を量産する
・部下との信頼関係が生まれ、味方が増える
・この人は私のことを理解してくれている
・上司の説得力はない、「この人信頼してもいいのかな」いつも品定めされている
■部下の承認欲求を満たす。
■主体的に動くことが習慣。すぐやる人にになる。
【部下ノートで汗をかくのは上司】
■終身雇用制度終焉。
・長い目で、育成できない。雇用も安定していない。
・これまでとは違った育て方を身につけなれば、いつまでも「できない部下」を抱え続けることになる。
■多様化する部下に合わせる指導
⇒終身雇用時代は、「自分より若い正社員の男性」ばかりだった。
⇒
・雇用形態多様化
・女性の社会進出
・契約社員、派遣社員等の非正規社員
・年上部下、以前の上司が部下になる
・外国人
■年齢、性別、言葉、文化 宗教、価値観、考え方異なる部下。
■部下一人一人に目を向けなければ、それぞれを理解することができない。
■組織論2・6・2
・組織の中の位置づけ
優秀な人材2
普通の6
普通以下2
⇒部下になる(確率)のは、圧倒的に普通の人達。
■普通の人材をできる部下に変えるための、3つのこと
1ピグマリオン効果
・他者からの期待を受けることで、その期待に沿った成果を出すことができる
・「彼はきっと伸びる」「彼女は意外といいよ」、期待感を持って育てる
2部下の指導は段階に応じて分ける。
※下記【できる部下にはコーチング、できない部下にはティーチング】に続く。
・育成途中の部下
・仕事ができるようになった部下
3心理的安全性
・Google社が、大規模労働調査を実施した結果判明した、例の話
・その会社にいてもいいんだ、安心感を与える
【できる部下にはコーチング、できない部下にはティーチング】
1そもそもやり方がわからないだからできない
2やり方はわかっているけどいつもできるわけではない
【行動分析学】
向山洋一(むこうやま よういち)、TOSS(トス:Teachers' Organization of Skill Sharingの略)代表を務め、日本の教育界に多大な影響を与えている。日本教育技術学会会長。
※こちらも、いずれ読書感想文を(^^♪
■できない子供を、どうやって早くできるようにするか。
・1をクリアして2の段階になる
・行動を細分化すること
事例「逆上がり」
1鉄棒を両手で握って立つ
2片足を振り上げる
3もう片方の足を蹴る
4肘を曲げて体を引き上げる
5鉄棒に巻き付く
・できない理由は、人それぞれ
・練習を細分化し、苦手な箇所だけ練習する
・1から2に到達するには、行動を細分化して丁寧に教える
■出来たときにはほめる、出来たことを認める
■2から、いつでも「できる部下」にするには習慣化
・最適なタイミングで声をかけて、ほめる
【コンピテンシー】
■見えない貢献度を見える化する
事例:プロサッカー選手
・90分間の目の動き
・ボールタッチ数
・走行距離
・各選手に、その選手の動きを追うカメラがある
・役割に応じた、細部にわたるパフォーマンス評価基準
■正しく部下を評価する
・ハロー効果
・直近化傾向(直近しか、評価しない)
■部下の目標設定
・目に見えない貢献度を可視化する
・与えられた目標は、やらされ感満載、部下に適した目標を提案できる
・仮にたやすく達成できるような目標の申し込みがあったとしても、部下の成長につながる目標に上方修正することができる
・自己決定感が大事(×やらされ感)
■企業に管理職が必要な理由は?
・なぜ直接部門で貢献してきた人材を、管理職にするのか?
⇒その人材がつくってきた数字と、同等の数字を作れる部下を、育てれば育てるほど、会社の業績が上がるから
事例:1億円の利益を出してきたAさんを管理職に登用し、10人の部下を持たせる
⇒Aさんが管理職に専任、1億円の利益が無くなる
⇒10人が、Aさんの10%の成果を出せば、1億円の利益をキープできる、20%だと、2億円
⇒管理職の最大の責務は、一人でも多くのできる部下をつくること